ビジネス

GDPを購買力平価で換算すれば日本は中国の3分の1という現実

 急激な円安が進行し、9月19日には1ドル=109円台に突入。円安になれば輸出企業の業績が上がり日本経済にとって大きなプラスになりそうだが、はたしてそうだろうか。

 そもそも円安は良いことだという考えそのものが幻想である。円安政策は国力そのものをじわりと削ぎ、日本の国際的地位を貶めている。慶応義塾大学大学院准教授の小幡績氏がいう。

「自国通貨が安くなって喜んでいるのは日本だけ。自国通貨が安くなるということは『交易条件が悪化する』わけで、通貨は国の力というのが、そもそも世界経済の常識だ」

 経済学者の田代秀敏氏(RFSマネジメント・チーフエコノミスト)は、日本と中国のGDPをドル換算で比較し、こう語る。

「日本は1968年から2009年まで、自他共に認める『世界第2の経済大国』だった。それは、ドル建てGDPが米国に次ぎ2番目の大きさだったからだ。

 だが、2010年にドル建てGDPで日本は中国に逆転された。それでも、民主党政権下の2012年の段階では日本のGDPは中国の7割強の水準を維持していたが、安倍政権下の円安政策によって、この2014年6月末には一気に中国の5割以下に縮んでしまった」

 日本が中国にGDPで抜かれたのは最近のこと──そう考えている日本人は多いだろう。だが、世界では各国GDPをドルベースで評価するのが当たり前。すでに「日本は中国の半分以下の経済規模しかない国」と認識されているのだ。そうした地位の低下を招いたのは、安倍政権下で2割も通貨の価値を下げた急速な円安政策なのである。

 その結果は日中間の外交・安全保障問題にまで影響すると田代氏は指摘する。

関連キーワード

トピックス

東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
津波警報が発令され、ハワイでは大渋滞が発生(AFP=時事)
ハワイに“破壊的な津波のおそれ” スーパーからは水も食料品も消え…「クラクションが鳴り止まない。カオスです」旅行者が明かす現地の混乱ぶり《カムチャツカ半島地震の影響》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
牛田茉友氏はNHKの元アナウンサーだったこともあり、街頭演説を追っかける熱烈なファンもいた(写真撮影:小川裕夫)
参院選に見るタレント候補の選挙戦の変化 ラサール石井氏は亀有駅近くで街頭演説を行うも『こち亀』の話題を封印したワケ
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン